2025年以降、Amazonで以前と同じことをしているのに結果が出にくくなった——そう感じているセラーは多いはずです。その原因は「自分の努力不足」ではなく、市場の構造が変わったことにあるのではないでしょうか。

鉄鋼から読む、中国の過剰生産モデル

まず、Amazonとはまったく関係のない話から始めます。

中国は世界の鋼材輸出の42%を占めています(2024年)。輸出量は前年比+22.7%で増え続け、一方で輸出単価は-19.4%下落しました(出典:東洋経済オンライン)。なぜこんなことが起きるのか。

中国国内の不動産不況で鉄鋼の需要が急減した。でも工場は止められない。余った鉄鋼を世界中に安く売りさばくしかない。その結果、世界の鉄鋼市場全体の価格が押し下げられていく——という構造です。

これはAmazonで売っている生活用品でも、まったく同じことが起きています。

TEMUとSHEINは「余剰品の世界配送システム」

TEMU、SHEINという2つのプラットフォームは、中国国内に大量にある生活用品を世界中にばらまく仕組みとして機能しています。

TEMUのモデルは「フルマネジメント型」です。中国の工場はTEMUの指定倉庫に商品を納品するだけ。仕分け・梱包・通関・配送・決済・返品対応——残りの全部をTEMUが担う。工場はものを作って送るだけでいい。

その物流規模は圧倒的です。SHEINとTEMUを合わせると、1日あたり約1万トンの航空貨物を世界中に出荷しているとされています(SHEIN 5,000トン、TEMU 4,000トン)。

中国政府の輸出支援政策と組み合わさることで、この価格帯での展開が成立しています。個々の工場がやろうとしても絶対に真似できないスケールです。

TEMUの検品が生む、もう一つの問題

TEMUは倉庫で厳格な検品を行い、基準を満たさない商品は工場に返却します。消費者向けには「品質のいいものを届けている」という体制です。

ただ、弾かれた不良品は工場に戻る。工場には不合格品が積み上がっていく。それがどこに流れるか、想像に難くない。1688などの仕入れサイトで日本のセラーが買う商品の中に混ざり込んでいく——そう推測するのは、あながち的外れではないはずです。

この「不良品をどう扱うか」は日本のセラーにとって独立した課題です。原価計算の組み方・商品選び・外注化による解決策については、別記事で詳しく書いています

Amazon Japanへの影響

2024年、Amazon Japanへの新規セラー登録の50%以上が中国セラーになりました(Marketplace Pulse)。

日本は他の主要マーケットと比べると、まだ日本人セラーの割合が高い市場です。しかし傾向は同じ方向に向かっています。特定のキーワードへの参入スピードは目に見えて上がっており、以前なら競合が少なかったカテゴリにも、気づいたら中国セラーが大量に並んでいる——という状況が増えています。

それでもAmazonにはまだチャンスがある

飽和しているように見えて、Amazonでは常に新しいキーワードが生まれています。

新しい文化、新しい流行、海外から入ってくるトレンド——それが検索数を生み、市場を作る。いち早くそのポジションを取れたセラーが、しばらくの間その市場を独占できます。私自身も、ある特定のトレンドキーワードをいち早く捉えたことで、特定の市場で大きく売上を伸ばした経験があります。

逆に、すでに飽和している市場はCPC(広告単価)が大幅に上昇しており、新規参入の余地はほぼありません。そこに入っても消耗するだけです。

ニッチな市場をこそこそ取るのが一つの手です。売上規模が小さいニッチ市場は、中国セラーも大きな市場ほど積極的に入ってこない。競合が少ない状態で静かにポジションを築き、安定した利益を積み上げる。これは地味ですが、再現性のある戦い方です。

新しいビッグトレンドに素早く乗るのがもう一つの手法です。流行の初期段階で参入できれば、レビューも広告費も少ない状態でランキングを上げることができる。トレンドに対するアンテナを常に張っておくことが、ここでの武器になります。

では、その「新しいトレンド」はどこから来るのか。実はRedNote(小红书)→タオバオ→1688→日本という明確な連鎖があります。このトレンドの流れについては別記事で詳しく解説しています


中国の生活用品が世界のECを飽和させていく流れは止められません。ただ、市場は常に動いており、新しい波は必ず来ます。その構造を理解した上で、次の波を早く見つける目を養うこと——それが今のAmazonセラーに求められていることだと感じています。