はじめに
「Claude CodeでAIオーケストラを試してみた」「AIエージェントで社長と社員を作って、会社を丸ごと回してみた」——こういった話を聞くたびに、「どこまで本当なのか」と思います。
私自身、ChatGPT、Claude、Geminiをはじめ、物販に使えそうなAIツールをひと通り試してきました。特に今回は、AIエージェント Claude Code・Codexを実際に使ってみてわかった「本当にできること」と「できないこと」を、正直に書きます。
結論を先に言うと、AIオーケストラはやめておいた方がいい。AIエージェントで社長と社員を作っても大した結果は生まれなかったですが、非エンジニアの私でもできることが圧倒的に増えました。
AIエージェントで本当にできたこと
① コーポレートサイト・ホームページの作成
今このブログが掲載されているコーポレートサイトを、AIエージェントと一緒に作りました。
「どんなサイトにしたいか」要件定義と設計をまとめて、AIエージェントに渡す。すると割と高精度のHTML・CSSを書いてくれます。「ここを修正したい」「この機能を追加したい」と伝えれば、その都度対応してくれる。デプロイ(公開)のやり方もわからない部分はエージェントに聞きながら進めて、最終的に本番環境まで持っていけました。
以前なら制作会社に依頼するか、自分で一から勉強するしかなかった。エンジニアでなくても「作れる」選択肢が現実になったというのが、AIエージェントで一番感じた変化ですね。
何個か作っていくうちに、今では1サイト1〜2時間で仕上げられるようになりました。慣れるほどにエージェントへの指示の出し方がわかってきて、スピードが上がっていく感覚があります。
② 工場・仕入れ先のリサーチ
AIエージェントの真骨頂は並列処理です。Claude Codeに「〇〇を製造できる工場を100件探してきて」と依頼すると、100体のサブエージェントが並行してウェブ上を探索し始めます。
特に面白かった使い方が、47都道府県を47エージェントに割り当てて同時に探させる方法です。「各都道府県で〇〇を扱っている取引先を探して」と指示すると、人間が一人でポツポツ調べていたら何日もかかる作業が一気に終わります。ウェブ上に散らばっている情報を、人間一人では到底カバーできない規模で拾ってきてくれます。まあそれでも見つからないときもありますがね。次にいくしかないですね。
ただし、大きな欠点があります。トークン消費量が爆発的に増えるのです。Claudeの月20ドルプランは一瞬で溶けます。
毎回使うものではなく、「本気で探したい」「この案件は時間をかけられない」という局面に絞って投入する——そういう割り切りが現実的です。
③ 経費データの仕訳変換・自動計上(今のところ最大の時間削減)
これが今のところ、AIエージェントで実現した中で最も大きな時間削減になった取り組みです。
Amazon SP-APIで経費データを取得し、1ヶ月分をデータベースに格納してサマリを作成。内容を確認したあと、そのまま仕訳データに変換して、マネーフォワードクラウド会計のAPIに渡して計上する——この一連のフローをClaude Codeにコーディングさせ、Webアプリ化しました。
以前はAmazonのレポートを毎月ダウンロードして、EXCELで整形して、マネーフォワードに手入力していました。この作業が丸ごとなくなりました。
決め手になったのはマネーフォワードクラウド会計がAPIを公開したことです。しかも無料で使えます。
以前のマネーフォワードにも外部連携はありました。銀行口座を接続してデータを取り込む、いわば「外から中へ」の一方通行です。今回公開されたAPIでできるようになったのは**「中から外へ」の出力**、そして**「外から中へ」のCSVアップロードによる書き込み自動化**です。この双方向が実現したことで、会計処理をシステムとして組めるようになりました。今はアプリを立ち上げてボタンを押すと月間のサマリーがWebで見れて、仕訳ボタンを押すと仕訳されてアップロードボタンを押すと、MFに入って完了。ずいぶん楽になりました。
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AIでできなかったこと——2つのパターン
逆に「できなかったこと」には大きく2種類あります。AIの外にある環境がブロックしているケースと、AIに枠を与えられていないためにうまくいかないケースです。混同すると、AIを責めるべき場面で環境のせいにしたり、逆に環境の壁をプロンプトの工夫で乗り越えようとして時間を無駄にしたりします。
<環境の制約>
① Amazonリサーチの自動化
リサーチをAIにやらせたいというのは多くの人が考えることです。ただ、AmazonはWebクローラーに対してrobots.txtで明確に制限をかけており、AIのボットが自動でリサーチすることはできません。これはAIの問題ではなく、Amazon側のルールです。
「ではセラースプライトのAPIを使えばいい」という考えもあります。ただ、セラースプライトのAPIは安くても月499ドル。小規模ビジネスでコンスタントに払い続けるのは現実的ではありません。
私が落ち着いたのは半自動化です。データは手動でCSVにダウンロードして、そのCSVをAIに渡して分析させる。全自動にはできませんが、分析の速度と精度は確実に上がります。「完全自動化はできない。でも半自動化ならできる」という現実を受け入れることが、AIをうまく活用する第一歩だと思っています。
<AIの限界>
② 枠を決めずに「任せる」こと
これは完全に自分の失敗談です。
要件定義が曖昧なまま指示を出すと、エージェントは見当違いな方向に走り始めます。修正しようとしてもまた外れる。何度やっても正しい答えが返ってこない。気づくと堂々巡りになっています。
冷静に振り返ると、原因はほぼ自分にあります。「具体的に何をどこまでやるか」を決めずに投げていた。要件定義をサボった分だけ、エージェントがブレる。
さらに悪化するのがコンテキスト長の問題です。やり取りが長くなるほど、エージェントは会話の前半を参照できなくなっていきます。最初に決めたはずの前提を忘れ、どんどん的外れになっていく。本来なら「コンテキストをコンパクトに整理して再開する」が正解です。
でもそれをせず、エージェントに向かって「何回言ってもわからんのか」「高いトークン料金払ってるのにもう解約や!」とAIをののしり、ディスるわけです。今も時々やってます笑。要件定義は人の仕事ですね。
③ 根拠のない推論を勝手に述べてくる
これが地味に一番うっとうしいです。
AIは指示していないのに、勝手に「推論」を展開し始めます。しかも褒め上手なので、最初の頃は完全に乗せられていました。「この方向性は正しいと思います。なぜなら〜」と自信満々に語るのですが、よく考えると何のデータも引用していない。「その根拠はどこにありますか」と聞くと、「実はありません」みたいな返答が来る。かなり進めてしまってから気づいたこともありました。
AIは否定するより肯定する方向に動く癖があります。ユーザーが乗り気なら乗り気な方向で話を膨らませる。それが推論になり、気づけばエビデンスのない話を一緒に信じていた、という構造です。
今は .md ファイルに「根拠やデータがない推論は勝手に作らないこと」と明示的に書いて指示するようにしています。これで大分マシになりました。ChatGPTの方がこの癖は強い印象があります。
④ AIオーケストラ——一晩回して、朝ガッカリした話
これははじめにでも触れたテーマです。実際にやってみました。
Claude Code の一つのプロジェクト内にメインエージェントを置き、複数のサブエージェントを持たせる構成です。サブエージェントそれぞれに CLAUDE.md で役割を厳密に規定していきます。「あなたはリサーチ担当」「あなたは経費担当」——そんなイメージで、ビジネス上の役割を一人ひとりに割り当てていくわけです。メインエージェントがオーケストラの指揮者のように全体を統括する設計です。
これはなかなかできないし(会社一つを言葉でプログラムするようなもの)、小さな枠組みでやってみても、結果がブレる・外れる、ということが起きます。夜セットして一晩回し、朝確認してみると……割とガッカリする内容しか出てきませんでした。
振り返ると、当たり前の話かもしれないとも思います。ビジネス上の判断は、人間の担当者でも簡単にはできないことです。「新規ビジネスを企画してきて」と人に頼んでも、すぐにいいものが出てくるわけではない。それをAIにやらせて、一晩で成果を期待するのは、さすがに欲張りすぎだったかもしれません。
アイディアや企画設計が足りなかった部分もあると思います。まだ発展途上の使い方だとは感じています。ただ現時点では、AIオーケストラは「面白い実験」にとどまりました。実務で使えるレベルに育てるには、もう少し時間と試行錯誤が要ります。
結論:AIエージェントは、物販をかなりのレベルで自動化してくれるツールだった。
AIエージェントは、今まで私にはできなかったことをかなりのレベルまで実現させてくれました。コーポレートサイトの制作、取引先の並列リサーチ、会計処理の自動化——どれも以前なら外注するか諦めるかしかなかったことです。
AIはこれからもどんどんレベルが上がっていきます。今は「枠を決めないと走らない」という癖があっても、いずれそういった気遣いが不要になるくらい賢くなっていくでしょう。
まだAIエージェントを使っていない方は、一度試してみてください。ChatGPTに課金している方なら、実はCodex(AIエージェント)がすでに付属しています。気づかず使っていないだけ、という方も多いです。ClaudeにはClaude Codeがあります。
ぜひご自身の仕事の効率化に使ってみてはいかがでしょうか。